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01 / 人脈がない · 無料記事

アイドルグループを作りたい。でも、業界に知り合いが一人もいなかった

アイドルグループを作ってみたい。

最初は、そんなことを考えていた。どんな曲にしよう。衣装はどんな感じがいいだろう。考えているだけなら、楽しかった。

でも、少し具体的に考えようとすると、すぐに止まった。

「で、誰に相談すればいいんだろう」

僕はもともと、エンジニアとして働いていた。

芸能の仕事とは、接点のない生活だった。

コードを書いて、動かして、エラーが出たら調べる。分からないことがあっても、公式ドキュメントを読んだり、小さく試したりすれば、少しずつ前には進めた。

でも、アイドルグループの作り方には、見慣れたドキュメントがなかった。

メンバーはどうやって集めるのか。楽曲は誰に頼むのか。ライブにはどうすれば出られるのか。

そもそも、実績のない自分の話を聞いてくれる人なんているんだろうか。

パソコンの前で調べては、ブラウザのタブだけが増えていった。

エンジニアの知り合いはいても、相談できる人はいなかった

「人脈ゼロ」と書くと、少し大げさに見えるかもしれない。

友人がいなかったわけじゃない。仕事で付き合いのある人もいた。

ただ、連絡先を見返しても、「アイドルグループを作りたいんだけど」と相談できそうな人が思い浮かばなかった。

芸能事務所で働いている友人もいない。ライブを主催している知り合いもいない。

好きなアイドルのライブに行ったことはあっても、運営する側のことは、ほとんど何も知らなかった。

SNSを見ると、すでにグループを運営している人たちがいた。出演者募集の投稿も、楽曲制作の告知もあった。

でも、その一つひとつが、自分には少し遠く見えた。

「こういうのって、知り合いから紹介してもらうものなんじゃないか」

「何も知らない人が、いきなり連絡したら迷惑なんじゃないか」

相手が何か言ったわけでもないのに、自分の中で断られる理由を用意していた。

怖かったのは、「誰もいないこと」だけじゃなかった

今振り返ると、人脈がないこと以上に怖かったのは、何者でもない自分を説明することだった。

会社員として仕事をしていると、会社名や担当業務が、自分の説明をある程度してくれた。

でも、個人でアイドルグループを作ろうとすると、そうはいかなかった。

「何をしている方ですか?」

そう聞かれたときに、答えられるのは「これから始めたいと思っています」くらいだった。

自分でも、頼りなく聞こえる気がした。

メンバーとして応募する人から見れば、もっと不安だと思う。

この人は誰なのか。本当に活動するのか。途中でやめてしまわないか。

自分が応募する側だったら、同じことを考えるはずだ。

そこまで考えて、募集文を書く手が止まった。

調べている間は、失敗しなくて済む

僕はしばらく、調べることに時間を使った。

募集サイトを見たり、ほかのグループの紹介文を読んだり、必要そうなものをメモしたり。

エンジニアだったので、サイトを作る作業には取りかかれた。見出しを変える。レイアウトを整える。スマートフォンで確認する。

作業をしていると、前に進んでいる感じがした。

もちろん、それも必要な準備ではあった。

ただ、あるとき気づいた。

サイトの余白は何度も調整しているのに、誰にも連絡していない。

募集ページは下書きのまま。問い合わせの文章も、送信せずに保存してある。

返事が来なかったらどうしよう。初歩的な質問だと思われたらどうしよう。

だから、もう少し準備してから。

あの頃は、よくそう思っていた。準備が足りないのも本当だったけれど、断られるのが怖かったのも本当だった。

「人脈が必要」を、少し分けて考えてみた

しばらくして、「人脈がない」とひとまとめにして悩んでいても、何も決まらないなと思い始めた。

業界に詳しい人と知り合って、何でも相談できるようになる。

それを最初の目標にすると、僕には何から始めればいいのか分からなかった。

でも、目の前の疑問なら、もう少し小さくできる。

募集要項を掲載するには何が必要なのか。

練習場所を借りるには、どんな条件を確認すればいいのか。

楽曲制作の相談には、何を伝えればいいのか。

それぞれ、問い合わせ先と聞きたいことを整理することはできそうだった。

すぐに仲良くなる必要はない。最初から応援してもらう必要もない。

まず、相手が答えられる形で、一つ相談してみる。

そう考えると、ようやく「今日できること」になった。

経歴は増やせなくても、説明できることは増やせる

もう一つ、気持ちが変わったことがある。

運営実績がないことは、その時点では変えられない。

でも、どんなグループを作りたいのか、どこで活動するのか、自分が何を担当するのかは、考えて説明できる。

決まっていないことも、「ここはまだ未定です」と伝えられる。

僕にはエンジニアとしての経験があった。サイトや応募フォームを作ること、情報を整理すること、作業を一つずつ進めることはできた。

それだけで運営ができるわけではない。

ただ、自分にできることまで、全部ゼロとして数える必要はなかったんだと思う。

「業界の人間ではない自分」から始めるしかない。

その代わり、説明できることを増やして、返事をして、約束したことを進める。まずは、そこからだった。

あの頃は想像できなかった、今の話

少しだけ、その後の話をすると。

僕は実際にグループを立ち上げて、今も運営を続けている。この記事を書いている今、もうすぐ2周年を迎える。

ここでは名前を出せないけれど、業界の中では、それなりに名前を知ってもらえるグループになった。

あの頃、ブラウザのタブばかり増やしていた自分には、想像できなかった現在地だった。

そこに至るまでの募集や面談の話は、続きのnoteに書いた。でも、始まりが「相談できる人が一人もいない元エンジニア」だったことは、ここにも残しておきたい。

人脈がないまま考えている人へ

もし今、グループを作ってみたいのに、誰にも話せずにいるなら。

昔の僕も、そんな感じだった。

好きだからこそ、軽い気持ちで始めていいのか迷う。

知らないことが多すぎて、何を質問すればいいのかも分からない。

僕も、そこで止まっていた。

誰でも同じようにできる、とは言えない。必要なお金も時間もあるし、人と活動する難しさもある。

それでも、最初から業界の知り合いがそろっていないと、何も始められないわけではなかった。

もし当時の自分に一つだけ言うなら、

「人脈を作らなきゃ、と考える前に、誰に何を聞きたいのか、一つだけ書いてみたら」

たぶん、そんなことを言うと思う。

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